小説 大航海時代オンライン サルベージャー
大航海時代オンライン能登鯖で遊んでるコーキです。 これまでの内容はこちらを参照! http://ameblo.jp/tokusya2ka/ よろしくです<(_ _)>
第22話 涙雨
「コーキ君。明日の朝、出航だからね。」
Sakurakoさんの声が明るく俺に話しかける。
俺は、その声に無言でうなずきながらボーッと港を見ていた。
昨日、マリアルメルから聴いた地図の真実、そしてセシリーさんの目的。
頭の中でグルグルまわってるよ、ちくしょう!
そうそう、マリアルメルがあの炎の船から脱出できたのは、セシリーさんが、
隠れて俺達を見ていたからだった。だから、火を付けられて、すぐにマリアルメルを救助して二人で海に飛び込んだらしい。
セシリーさんが隠れてた理由はって?
もし、マリアルメルの思惑通りにひよこさんが連れて行かれたら、追いかけるつもりだったらしい。しかし、結果は彼女らの思いもしない事件へと発展していった。
まいったな…。
もし、地図の力でひよこさんが俺達と旅を続ける様に仕向けられたとしたら…。
困った、俺はひよこさんにどう接すればいいんだ?
「こぉぅらぁぁああ!!!コーキ!!!さぼってないで、働け!!!!」
げっ、ひよこさんが俺を見つけて怒鳴ってきやがった!
そのまま、俺はひよこさんに耳をつままれ、引きずられる。痛てえよ!
そのまま、ひよこさんに監視され働く俺。
だが、身体を動かしている方が何も考えなくて楽かも知れないな。
…
そして、夜がやってくる。
なかなか寝付けない俺は、一人港にやってきて海を見ていた。
この広い海のどこかで、いつか、ひよこさんはパンドラの箱を見つけてしまう。
その時、彼女は神話同様に箱を開けるのだろうか?
そんなことを考えている俺の横にセシリーさんがやってきた。
「ひよこさんの事、考えているのですか?」
セシリーさんが慈愛のこもった瞳で優しく俺をみつめる。
「…あんなにうるさいやつでも、今は仲間だからな。」
「…傷つけたくないですね、…ひよこさんのこと。」
「そうだな。だから、俺も決めましたよ。必ずパンドラの箱を破壊するって。」
セシリーさんは、俺のその言葉に微笑みながらうなずいた。
俺達は、結局朝まで二人で海を見ていた。互いの不安をごまかすように…。
そして、セシリーさんが準備のため一時宿屋へ向かったとき、俺はモーレツに後悔していた。
二人きりになるチャンスなんて、ほとんどないのに、なんで口説かなかったんだろう…。
ばかだな、俺。
…
「船長!出航準備できやしたぜ!」
船員の一人が俺に報告をする。
「よーし、ヤクモ!Sakurakoさんの出航を確認してから、出すぞ!俺達の後にはマリアルメルもでてくるから、もたもたするなよ!」
俺はヤクモに指示を出し、ヤクモが各船員にゲキを飛ばしている。
そうなのだ。Sakurakoさんのクリッパーとマリアルメルの大型スクーナー、そして、俺のブルーアドベンチャー号こと、大型探検用キャラックの3隻で艦隊を組んだのだ。
3隻はリオの港を出港し、しばらくクリッパー、キャラック、スクーナーの順で隊列を組み航行していた。が、
突然スクーナーのスピードが落ち、俺達と徐々に距離が離れていく。
何事かと思い、俺は船尾のほうへ駆けだしスクーナーを確認した。
スクーナーは何を思ったか、船体を横に向けて俺達に砲撃を開始した。
一瞬あせった俺達だが、弾はキャラックのかなり手前で失速し海に落ちていく。
これは威嚇射撃か!そう考えた俺は望遠鏡で改めてスクーナーの方を見ると…。
スクーナーの少し後方にポルトガルの海軍艦隊が確認できた。
なるほど、マリアルメルめ、囮になる気だな。
俺はしばし考えて、
「砲撃準備!目標大型スクーナー!ただし、1発も当てるんじゃないぞ!」
と、命令を出す。
「コーキ!あんた、何考えてるのよ!!」
ひよこさんが俺に抗議をするが、俺はマリアルメルの心意気をムダにするわけにはいかなかった。
彼女は俺とセシリーさんに全てを託し、俺達を先にいかすために囮になってくれたのだ。
ならば、俺達にできることは彼女と抗戦してる振りをして、スクーナーが海軍の的にならないようにするだけだ。
「めるるん!めるるーーん!!」
ひよこさんが叫ぶが、スクーナーはもはや遥か後方に見えるだけだった。
わかったよ、マリアルメル。ひよこさんは俺達が助けるから、無事で、無事でいてくれよ。
こうして、俺達がスクーナーと別れてから、しばらくして大粒の雨が振ってきた。
それは、まるでマリアルメルの涙のように、俺には感じられた。
………
ぶっ!突然、俺の顔に何かが貼りつきやがった。
それを取り除いた瞬間に目に入ってきたのは…。
ひよこさんの胸元で発行している地図だった。
「…コーキ…それ、地図の欠片みたいよ…。」
俺の顔に貼り付いていた欠片は、ひよこさんの地図と一体となっていった。
「これ、きっと、めるるんからの贈り物よ!そうよ、きっと!」
こんなこと言って、はしゃぐひよこさん。
断っておくが、その推測は絶対にはずれているからな!
俺は、いや、俺とセシリーさんは、はしゃぐひよこさんを複雑な思いで見ながら、次の港へと船を動かしていた。
つづく
Sakurakoさんの声が明るく俺に話しかける。
俺は、その声に無言でうなずきながらボーッと港を見ていた。
昨日、マリアルメルから聴いた地図の真実、そしてセシリーさんの目的。
頭の中でグルグルまわってるよ、ちくしょう!
そうそう、マリアルメルがあの炎の船から脱出できたのは、セシリーさんが、
隠れて俺達を見ていたからだった。だから、火を付けられて、すぐにマリアルメルを救助して二人で海に飛び込んだらしい。
セシリーさんが隠れてた理由はって?
もし、マリアルメルの思惑通りにひよこさんが連れて行かれたら、追いかけるつもりだったらしい。しかし、結果は彼女らの思いもしない事件へと発展していった。
まいったな…。
もし、地図の力でひよこさんが俺達と旅を続ける様に仕向けられたとしたら…。
困った、俺はひよこさんにどう接すればいいんだ?
「こぉぅらぁぁああ!!!コーキ!!!さぼってないで、働け!!!!」
げっ、ひよこさんが俺を見つけて怒鳴ってきやがった!
そのまま、俺はひよこさんに耳をつままれ、引きずられる。痛てえよ!
そのまま、ひよこさんに監視され働く俺。
だが、身体を動かしている方が何も考えなくて楽かも知れないな。
…
そして、夜がやってくる。
なかなか寝付けない俺は、一人港にやってきて海を見ていた。
この広い海のどこかで、いつか、ひよこさんはパンドラの箱を見つけてしまう。
その時、彼女は神話同様に箱を開けるのだろうか?
そんなことを考えている俺の横にセシリーさんがやってきた。
「ひよこさんの事、考えているのですか?」
セシリーさんが慈愛のこもった瞳で優しく俺をみつめる。
「…あんなにうるさいやつでも、今は仲間だからな。」
「…傷つけたくないですね、…ひよこさんのこと。」
「そうだな。だから、俺も決めましたよ。必ずパンドラの箱を破壊するって。」
セシリーさんは、俺のその言葉に微笑みながらうなずいた。
俺達は、結局朝まで二人で海を見ていた。互いの不安をごまかすように…。
そして、セシリーさんが準備のため一時宿屋へ向かったとき、俺はモーレツに後悔していた。
二人きりになるチャンスなんて、ほとんどないのに、なんで口説かなかったんだろう…。
ばかだな、俺。
…
「船長!出航準備できやしたぜ!」
船員の一人が俺に報告をする。
「よーし、ヤクモ!Sakurakoさんの出航を確認してから、出すぞ!俺達の後にはマリアルメルもでてくるから、もたもたするなよ!」
俺はヤクモに指示を出し、ヤクモが各船員にゲキを飛ばしている。
そうなのだ。Sakurakoさんのクリッパーとマリアルメルの大型スクーナー、そして、俺のブルーアドベンチャー号こと、大型探検用キャラックの3隻で艦隊を組んだのだ。
3隻はリオの港を出港し、しばらくクリッパー、キャラック、スクーナーの順で隊列を組み航行していた。が、
突然スクーナーのスピードが落ち、俺達と徐々に距離が離れていく。
何事かと思い、俺は船尾のほうへ駆けだしスクーナーを確認した。
スクーナーは何を思ったか、船体を横に向けて俺達に砲撃を開始した。
一瞬あせった俺達だが、弾はキャラックのかなり手前で失速し海に落ちていく。
これは威嚇射撃か!そう考えた俺は望遠鏡で改めてスクーナーの方を見ると…。
スクーナーの少し後方にポルトガルの海軍艦隊が確認できた。
なるほど、マリアルメルめ、囮になる気だな。
俺はしばし考えて、
「砲撃準備!目標大型スクーナー!ただし、1発も当てるんじゃないぞ!」
と、命令を出す。
「コーキ!あんた、何考えてるのよ!!」
ひよこさんが俺に抗議をするが、俺はマリアルメルの心意気をムダにするわけにはいかなかった。
彼女は俺とセシリーさんに全てを託し、俺達を先にいかすために囮になってくれたのだ。
ならば、俺達にできることは彼女と抗戦してる振りをして、スクーナーが海軍の的にならないようにするだけだ。
「めるるん!めるるーーん!!」
ひよこさんが叫ぶが、スクーナーはもはや遥か後方に見えるだけだった。
わかったよ、マリアルメル。ひよこさんは俺達が助けるから、無事で、無事でいてくれよ。
こうして、俺達がスクーナーと別れてから、しばらくして大粒の雨が振ってきた。
それは、まるでマリアルメルの涙のように、俺には感じられた。
………
ぶっ!突然、俺の顔に何かが貼りつきやがった。
それを取り除いた瞬間に目に入ってきたのは…。
ひよこさんの胸元で発行している地図だった。
「…コーキ…それ、地図の欠片みたいよ…。」
俺の顔に貼り付いていた欠片は、ひよこさんの地図と一体となっていった。
「これ、きっと、めるるんからの贈り物よ!そうよ、きっと!」
こんなこと言って、はしゃぐひよこさん。
断っておくが、その推測は絶対にはずれているからな!
俺は、いや、俺とセシリーさんは、はしゃぐひよこさんを複雑な思いで見ながら、次の港へと船を動かしていた。
つづく
第21話 パンドラの箱
リオの酒場に到着する俺。
しかし、酒場と言うよりは…その…、青空市場〜〜?
もう少しましな場所を選べよ、マリアルメル〜。
そんな俺の思惑を無視したかのようにマリアルメルが声をかける。
「おそ〜い!こっち、こっち〜!」
すでに何杯かは飲んでるんだろうな、ベロベロだよ。
もっとも、俺は未だにみぞおちの辺りが痛むので、出された酒を眺めるだけだ。
さて、なにから訊こうか?
そう考えた矢先マリアルメルから話始める。
「先に言っとくけど、謝らないわよ!」
おい、あれだけの事して、謝罪なしかい。
「…あんたのせいで…。ひよこさんを救えない…。」
こう言いながら大粒の涙をこぼし始めるマリアルメル。
ちょ〜〜っと、まて。迷惑してて助けて欲しいのは、むしろ俺なんだが。
しかし、マリアルメルはいきなり、俺の胸倉をつかみ、叫ぶ。
「あんた、ひよこさんが何を持ってるのか知ってるの?ひよこさんが、これからどんな目にあうのか…。」
そう言いながら涙を拭こうともせず、俺に詰め寄る。
「あんたがいなければ、あんたがいなければ、ひよこさんを連れ出せるのに…。」
そう言って、後は俺の胸を叩きながら大泣きするだけだ。
俺は何もできず、ただマリアルメルのやりたいようにさせるしかできなかった。
少し落ち着いてきた頃合を見はかってマリアルメルに尋ねる。
「俺は何も知らない。だから、知ってる事を教えてくれ。」
「…地図よ。」
マリアルメルがポツッと話す。
「地図?地図って、あのひよこさんが持ってるあの地図の欠片か?」
「そうよ。あの地図がひよこさんに不幸を呼ぶわ。」
俺には何がなんだがわからない。あれはただの沈没船の地図…じゃないんだろうとは思ってたが。
俺は黙ってマリアルメルの次の言葉を待つ。
「あの地図がすべて揃い、そこに眠ってるものを手に入れたとき…。」
俺は息を呑んだ。
「世界が滅ぶかもしれない…。」
ブハッッ!俺は思わず吹きだした。ばかばかしい。たかが宝のひとつやふたつで世界が滅んでたまるか!
だが、マリアルメルは不機嫌な表情を隠そうともせず、
「笑い事じゃないの!あの地図はパンドラの箱を示した地図なのよ!」
パンドラの箱…確かギリシャ神話だったかな、パンドラって娘が神様から箱を預かるが、けっして開けてはいけないと言われていた。しかし、好奇心に負けたパンドラは箱を開けてしまい、この世に災厄という災厄や、不幸をばらまいてしまった。こんな内容だったな。
「知ってるでしょ?この世の災厄を封じ込めた箱の事を。それが、あんたたちが探している宝の正体なのよ。」
「ばかばかしい。仮にその話が本当なら地図を捨てさせればいいじゃないか。」
「それができないんです…。」
わぁ、びっくりした!いつのまにか、俺たちのテーブルにセシリーさんが姿を現していた。
「…おそらく、ひよこさんはすでに地図に捕りこまれています。地図を手放す事はないでしょう。そして、取り込まれているのは…コーキさん、あなたもなんです。」
「えぇぇぇぇぇぇぇ〜〜っ!」
こいつは驚いた、俺は自分の意志で行動してる。誰かに操られてるつもりはない。
「なぜ、タイミングよく、ひよこさんやあなたに救いの手が現れるのでしょうか?疑問に思いませんでしたか?」
セシリーさんに言われて始めてじっくり考えてみる。たしかに、この旅では2〜3度は軽く死んでいてもおかしくはなかったろう。あれは俺の悪運の強さのせいじゃなかったのか?
「ひよこさんは地図に選ばれ、あなたはその護衛に選ばれた…。そう考えればつじつまが合うんです。」
なんてこった。俺たちの冒険って、見えない何かに仕組まれてたってのかよ。
「仮にひよこさんが地図を捨てても、必ずひよこさんの手に戻るでしょう。理由は…まだわかりませんが、ひよこさんを必要としているのはまちがいありません。」
俺は言葉もなかった。
マリアルメルだけなら信じなかったが、セシリーさんまでとは…。
「…正直、まだ信じられない。が、その話が本当ならば、どうすればいい?」
今度はマリアルメルが口を開く。
「…ひよこさんを…監禁するしか…ないのよ。…一生ね…。」
そうか、俺がひよこさんを連れまわす限り、いつかは箱にたどりつく。
それは、ひよこさんが世界滅亡の犯人になるって事か。
「…だから、あたしは一生ひよこさんといっしょに監禁されてもいいと考えたわ。それで、世界が救われるなら…。」
今度はセシリーさんが口を開く。
「そうね。監禁ができればいいのかもしれない。でも、ひよこさんに本当にそんな事できるの?だから、あたしはもうひとつの方法を選ぶことにしたわ。」
「もうひとつの方法?」
俺があほうのように問い直す。
「そう。それは…パンドラの箱そのものを破壊する事!」
このセシリーさんの言葉には強い決意が込められていた。
ってことは、セシリーさんは最初からそれが目的で、旅に同行してたのか。
「できるの?そんな事!神の造った兵器とも言われているのに…。」
マリアルメルの疑問は俺の疑問だった。
「やらなきゃ、ひよこさんも世界も救えませんわ。」
セシリーさんが静かに言い切る。
「すでに、喫茶ろんどん商会もバックアップの準備をヨーロッパでしてくれてます。もはや、他に方法はないのです!」
あの時フェニックスもE.C.ロンメルも、簡単に俺たちを見逃したのはこのせいか。
始めから奴らは俺たちは眼中になかったって事か。ちぃ、ばかにされた気分だぜ。
だが、確かにセシリーさんの言う通りだな。俺たちに選択肢はないようだ。
俺は自分達の未来に現れたこの不幸に大きな不安を感じていた。
つづく
しかし、酒場と言うよりは…その…、青空市場〜〜?
もう少しましな場所を選べよ、マリアルメル〜。
そんな俺の思惑を無視したかのようにマリアルメルが声をかける。
「おそ〜い!こっち、こっち〜!」
すでに何杯かは飲んでるんだろうな、ベロベロだよ。
もっとも、俺は未だにみぞおちの辺りが痛むので、出された酒を眺めるだけだ。
さて、なにから訊こうか?
そう考えた矢先マリアルメルから話始める。
「先に言っとくけど、謝らないわよ!」
おい、あれだけの事して、謝罪なしかい。
「…あんたのせいで…。ひよこさんを救えない…。」
こう言いながら大粒の涙をこぼし始めるマリアルメル。
ちょ〜〜っと、まて。迷惑してて助けて欲しいのは、むしろ俺なんだが。
しかし、マリアルメルはいきなり、俺の胸倉をつかみ、叫ぶ。
「あんた、ひよこさんが何を持ってるのか知ってるの?ひよこさんが、これからどんな目にあうのか…。」
そう言いながら涙を拭こうともせず、俺に詰め寄る。
「あんたがいなければ、あんたがいなければ、ひよこさんを連れ出せるのに…。」
そう言って、後は俺の胸を叩きながら大泣きするだけだ。
俺は何もできず、ただマリアルメルのやりたいようにさせるしかできなかった。
少し落ち着いてきた頃合を見はかってマリアルメルに尋ねる。
「俺は何も知らない。だから、知ってる事を教えてくれ。」
「…地図よ。」
マリアルメルがポツッと話す。
「地図?地図って、あのひよこさんが持ってるあの地図の欠片か?」
「そうよ。あの地図がひよこさんに不幸を呼ぶわ。」
俺には何がなんだがわからない。あれはただの沈没船の地図…じゃないんだろうとは思ってたが。
俺は黙ってマリアルメルの次の言葉を待つ。
「あの地図がすべて揃い、そこに眠ってるものを手に入れたとき…。」
俺は息を呑んだ。
「世界が滅ぶかもしれない…。」
ブハッッ!俺は思わず吹きだした。ばかばかしい。たかが宝のひとつやふたつで世界が滅んでたまるか!
だが、マリアルメルは不機嫌な表情を隠そうともせず、
「笑い事じゃないの!あの地図はパンドラの箱を示した地図なのよ!」
パンドラの箱…確かギリシャ神話だったかな、パンドラって娘が神様から箱を預かるが、けっして開けてはいけないと言われていた。しかし、好奇心に負けたパンドラは箱を開けてしまい、この世に災厄という災厄や、不幸をばらまいてしまった。こんな内容だったな。
「知ってるでしょ?この世の災厄を封じ込めた箱の事を。それが、あんたたちが探している宝の正体なのよ。」
「ばかばかしい。仮にその話が本当なら地図を捨てさせればいいじゃないか。」
「それができないんです…。」
わぁ、びっくりした!いつのまにか、俺たちのテーブルにセシリーさんが姿を現していた。
「…おそらく、ひよこさんはすでに地図に捕りこまれています。地図を手放す事はないでしょう。そして、取り込まれているのは…コーキさん、あなたもなんです。」
「えぇぇぇぇぇぇぇ〜〜っ!」
こいつは驚いた、俺は自分の意志で行動してる。誰かに操られてるつもりはない。
「なぜ、タイミングよく、ひよこさんやあなたに救いの手が現れるのでしょうか?疑問に思いませんでしたか?」
セシリーさんに言われて始めてじっくり考えてみる。たしかに、この旅では2〜3度は軽く死んでいてもおかしくはなかったろう。あれは俺の悪運の強さのせいじゃなかったのか?
「ひよこさんは地図に選ばれ、あなたはその護衛に選ばれた…。そう考えればつじつまが合うんです。」
なんてこった。俺たちの冒険って、見えない何かに仕組まれてたってのかよ。
「仮にひよこさんが地図を捨てても、必ずひよこさんの手に戻るでしょう。理由は…まだわかりませんが、ひよこさんを必要としているのはまちがいありません。」
俺は言葉もなかった。
マリアルメルだけなら信じなかったが、セシリーさんまでとは…。
「…正直、まだ信じられない。が、その話が本当ならば、どうすればいい?」
今度はマリアルメルが口を開く。
「…ひよこさんを…監禁するしか…ないのよ。…一生ね…。」
そうか、俺がひよこさんを連れまわす限り、いつかは箱にたどりつく。
それは、ひよこさんが世界滅亡の犯人になるって事か。
「…だから、あたしは一生ひよこさんといっしょに監禁されてもいいと考えたわ。それで、世界が救われるなら…。」
今度はセシリーさんが口を開く。
「そうね。監禁ができればいいのかもしれない。でも、ひよこさんに本当にそんな事できるの?だから、あたしはもうひとつの方法を選ぶことにしたわ。」
「もうひとつの方法?」
俺があほうのように問い直す。
「そう。それは…パンドラの箱そのものを破壊する事!」
このセシリーさんの言葉には強い決意が込められていた。
ってことは、セシリーさんは最初からそれが目的で、旅に同行してたのか。
「できるの?そんな事!神の造った兵器とも言われているのに…。」
マリアルメルの疑問は俺の疑問だった。
「やらなきゃ、ひよこさんも世界も救えませんわ。」
セシリーさんが静かに言い切る。
「すでに、喫茶ろんどん商会もバックアップの準備をヨーロッパでしてくれてます。もはや、他に方法はないのです!」
あの時フェニックスもE.C.ロンメルも、簡単に俺たちを見逃したのはこのせいか。
始めから奴らは俺たちは眼中になかったって事か。ちぃ、ばかにされた気分だぜ。
だが、確かにセシリーさんの言う通りだな。俺たちに選択肢はないようだ。
俺は自分達の未来に現れたこの不幸に大きな不安を感じていた。
つづく
第20話 よけいなお世話
アルベルトと向き合いながら間合いを測る俺。
隙はまったくないな、こりゃ。
かっこつけて啖呵を切ったものの、さてどうするか?
突っ込めば縦か横に真っ二つ!
と、いっても持久戦でも、俺の方が音をあげそうで…。
奇襲…は、もう無理だろうしな…。
しゃあない…一応あれを試すか…。
俺はアルベルトに対し徐々にではあるが距離を空ける。
逃げるためじゃないぞ!助走をつけるためだ。
ある程度まで間合いが空いた瞬間、俺は覚悟を決めて走り出した…。
ジグザグに!
右へ、左へと身体を振りながらアルベルトに近づいていく。
奴はその場を動かずにラブリュスを水平に構えた。
だが、そんなことは一向にかまわず俺は突進し奴の間合いに入る。
その瞬間、奴は水平にラブリュスを振り回し、俺は…。
その場でできるかぎり身体を屈めた。ボクシングでいうところのダッキングってやつだ。
見事、俺は賭けに勝ち、奴のラブリュスをギリギリのところでかわす。
そのままデュランダルを突き上げ身体ごと奴にぶつかっていく!
時間にすれば、ほんの数秒もないだろうが、この瞬間に俺は勝利を確信していた。
だが、奴は身体を無理やり捻り、ラブリュスは奴の右肩をかすめていく。
その瞬間、俺は腹部に強烈な痛みを感じていた。
奴の右拳が俺のみぞおちを捕らえ、見事なカウンターパンチとなって突き刺さる。
「ぐっ、えぇぇぇぇぇぇぇえええ!」
俺は声にもならない声をだしながら、少し後退しその場でくずれおちながら…
胃液を吐きまくっていた。
アルベルトが俺の側に近づき見下ろしやがる。
「…無様だな…。こんな弱い男が我が艦隊を翻弄していたとは…。」
心底、あきれ果てた声が俺に浴びせかけられる。
「コーキ!」
「コーキさん!」
「ばかぁぁあ!!」
みんなが悲壮な叫びをあげているのが耳に入る。
いよいよ、俺も終わりか…。ヤクモ、後を頼んだ。
「覚悟はいいか?」
アルベルトの声が死神のささやきに聞こえる…。みんな、さよならだ…。
俺は目を閉じ、その瞬間を待った。その時…
鼓膜を破るような轟音と大きく船体が揺れる。
そして、どこからか焼けるような匂いがしてくる。
俺もアルベルトもなにがおこっているのか理解できない。
「みなさん!合図です!!」
Sakurakoさんが突然叫ぶと同時に、どこからか
「コォ〜〜〜キィィィイ!」
これは、ヤクモの叫び声か?
気が付くとヤクモがアルベルトに不意打ちをして、俺から引き離すと同時に、
俺を抱えて、そのまま海に向かって船から飛び込むって、おい、めっちゃ高いぞ!!
身体中が悲鳴をあげるほどの衝撃を感じながら、本能的に水面に向かって泳ぐ。
「ぷはぁぁ〜!」
ようやく水面に顔をだした俺が見たのは、次々に飛び込む仲間たちと、
燃え盛る重キャラックの船体だった。
どうやら火薬庫を破壊して、それ以外にも爆破工作をしていたのだろう。
その船上から俺は身体が凍るような視線を受け取った。
姿こそ炎に隠れて見えないが、まちがいなくアルベルトの奴だ。
おそらく奴も生き残り、再び俺たちと合間見えるだろう。
その時、俺は無事に生き残れるのだろうか?
「コーキ、無事っすか?」
俺のところまで泳いできたヤクモが能天気に声をかける。
「ヤクモ…、このばかやろう!一騎打ちのじゃましやがって!」
俺はヤクモを怒鳴りつけるが…顔を笑っているんだろうな。
「すまないっす、コーキ。でも、ほら、迎えもそこに来てるっすよ。」
俺はヤクモが示す方向を見ると1隻のバルシャが近づいてきて、俺とヤクモを
救助してくれた。
船に乗っているのはアイシュキッスだ。彼女の話だと残りの仲間たちは違うバルシャで
救出したそうだ。そのアイシュキッスが俺に手を差し出す。
「後で救出料を請求にいきますね。」
そう言ってにっこり笑う。その後で、
「ちなみにお姉さまにチクったら、料金がわりに命をもらいますねぇ。」
と、目が笑ってない笑顔で言った。
もっとも、このアイシュキッスの行動にも理由があったのだが、それは後日に。
このときの俺は助かった喜び半分、請求された怒り半分ってとこだった。
ま、いいか。今は命があったことを素直に喜ぼう。
だが、そんな思いも、この後に聞いたマリアルメルの告白が打ち砕いてくれるのであった。
助かった俺は、しばらくの間食らったボディブローの影響で飯も食えず、地獄の苦しみを味わっていた。
「あららぁ、大変そうね。」
ニヤニヤと俺の様子を見ながらマリアルメルが近づいてくる。
「う、うるせぇ!元はといえば誰のせいだよ!」
俺は苦しそうな顔に精一杯の怒りを貼り付けてマリアルメルに毒づく。
「そうね、悪かったわ。おわびに、あたしの知ってる事を話してあげようと思ったんだけど、そんな顔をするのならやめちゃおっかな〜。」
こ、このやろう〜、いけしゃあしゃあと…。だが、彼女から訊きたい事は山ほどある。
なぜ、俺を罠に嵌めたのか?
なぜ、ポルトガルを裏切ってまでひよこさんを連れ去ろうとしたのか?
どうやって、燃える船から脱出したのか?
なにより、今回の一件にうちのメンバーがどこまで関わっていたのか?
俺以外はぜったいに皆…グルだろう!
で、なくては救出劇の手際が良すぎる。
「わかった。後で酒場に向かうから、そこで話せ。」
俺はマリアルメルと約束をする。
「そうね。こんな話、酔わなきゃできないわ…ね。」
つづく
隙はまったくないな、こりゃ。
かっこつけて啖呵を切ったものの、さてどうするか?
突っ込めば縦か横に真っ二つ!
と、いっても持久戦でも、俺の方が音をあげそうで…。
奇襲…は、もう無理だろうしな…。
しゃあない…一応あれを試すか…。
俺はアルベルトに対し徐々にではあるが距離を空ける。
逃げるためじゃないぞ!助走をつけるためだ。
ある程度まで間合いが空いた瞬間、俺は覚悟を決めて走り出した…。
ジグザグに!
右へ、左へと身体を振りながらアルベルトに近づいていく。
奴はその場を動かずにラブリュスを水平に構えた。
だが、そんなことは一向にかまわず俺は突進し奴の間合いに入る。
その瞬間、奴は水平にラブリュスを振り回し、俺は…。
その場でできるかぎり身体を屈めた。ボクシングでいうところのダッキングってやつだ。
見事、俺は賭けに勝ち、奴のラブリュスをギリギリのところでかわす。
そのままデュランダルを突き上げ身体ごと奴にぶつかっていく!
時間にすれば、ほんの数秒もないだろうが、この瞬間に俺は勝利を確信していた。
だが、奴は身体を無理やり捻り、ラブリュスは奴の右肩をかすめていく。
その瞬間、俺は腹部に強烈な痛みを感じていた。
奴の右拳が俺のみぞおちを捕らえ、見事なカウンターパンチとなって突き刺さる。
「ぐっ、えぇぇぇぇぇぇぇえええ!」
俺は声にもならない声をだしながら、少し後退しその場でくずれおちながら…
胃液を吐きまくっていた。
アルベルトが俺の側に近づき見下ろしやがる。
「…無様だな…。こんな弱い男が我が艦隊を翻弄していたとは…。」
心底、あきれ果てた声が俺に浴びせかけられる。
「コーキ!」
「コーキさん!」
「ばかぁぁあ!!」
みんなが悲壮な叫びをあげているのが耳に入る。
いよいよ、俺も終わりか…。ヤクモ、後を頼んだ。
「覚悟はいいか?」
アルベルトの声が死神のささやきに聞こえる…。みんな、さよならだ…。
俺は目を閉じ、その瞬間を待った。その時…
鼓膜を破るような轟音と大きく船体が揺れる。
そして、どこからか焼けるような匂いがしてくる。
俺もアルベルトもなにがおこっているのか理解できない。
「みなさん!合図です!!」
Sakurakoさんが突然叫ぶと同時に、どこからか
「コォ〜〜〜キィィィイ!」
これは、ヤクモの叫び声か?
気が付くとヤクモがアルベルトに不意打ちをして、俺から引き離すと同時に、
俺を抱えて、そのまま海に向かって船から飛び込むって、おい、めっちゃ高いぞ!!
身体中が悲鳴をあげるほどの衝撃を感じながら、本能的に水面に向かって泳ぐ。
「ぷはぁぁ〜!」
ようやく水面に顔をだした俺が見たのは、次々に飛び込む仲間たちと、
燃え盛る重キャラックの船体だった。
どうやら火薬庫を破壊して、それ以外にも爆破工作をしていたのだろう。
その船上から俺は身体が凍るような視線を受け取った。
姿こそ炎に隠れて見えないが、まちがいなくアルベルトの奴だ。
おそらく奴も生き残り、再び俺たちと合間見えるだろう。
その時、俺は無事に生き残れるのだろうか?
「コーキ、無事っすか?」
俺のところまで泳いできたヤクモが能天気に声をかける。
「ヤクモ…、このばかやろう!一騎打ちのじゃましやがって!」
俺はヤクモを怒鳴りつけるが…顔を笑っているんだろうな。
「すまないっす、コーキ。でも、ほら、迎えもそこに来てるっすよ。」
俺はヤクモが示す方向を見ると1隻のバルシャが近づいてきて、俺とヤクモを
救助してくれた。
船に乗っているのはアイシュキッスだ。彼女の話だと残りの仲間たちは違うバルシャで
救出したそうだ。そのアイシュキッスが俺に手を差し出す。
「後で救出料を請求にいきますね。」
そう言ってにっこり笑う。その後で、
「ちなみにお姉さまにチクったら、料金がわりに命をもらいますねぇ。」
と、目が笑ってない笑顔で言った。
もっとも、このアイシュキッスの行動にも理由があったのだが、それは後日に。
このときの俺は助かった喜び半分、請求された怒り半分ってとこだった。
ま、いいか。今は命があったことを素直に喜ぼう。
だが、そんな思いも、この後に聞いたマリアルメルの告白が打ち砕いてくれるのであった。
助かった俺は、しばらくの間食らったボディブローの影響で飯も食えず、地獄の苦しみを味わっていた。
「あららぁ、大変そうね。」
ニヤニヤと俺の様子を見ながらマリアルメルが近づいてくる。
「う、うるせぇ!元はといえば誰のせいだよ!」
俺は苦しそうな顔に精一杯の怒りを貼り付けてマリアルメルに毒づく。
「そうね、悪かったわ。おわびに、あたしの知ってる事を話してあげようと思ったんだけど、そんな顔をするのならやめちゃおっかな〜。」
こ、このやろう〜、いけしゃあしゃあと…。だが、彼女から訊きたい事は山ほどある。
なぜ、俺を罠に嵌めたのか?
なぜ、ポルトガルを裏切ってまでひよこさんを連れ去ろうとしたのか?
どうやって、燃える船から脱出したのか?
なにより、今回の一件にうちのメンバーがどこまで関わっていたのか?
俺以外はぜったいに皆…グルだろう!
で、なくては救出劇の手際が良すぎる。
「わかった。後で酒場に向かうから、そこで話せ。」
俺はマリアルメルと約束をする。
「そうね。こんな話、酔わなきゃできないわ…ね。」
つづく
第19話 断頭のアルベルト
セシリーさんが無言で俺に近づいてきて
「コーキさん、これを…。」
そう言ってセシリーさんが俺に一振りの剣を渡す。
「相手があの方では、これでも心もとないでしょうが…。」
そう言われて、改めて受け取った剣を確認する。
「これは…!」
渡されたのは名刀と言ってもいいだろう…デュランダルである。
もちろんレプリカではあるだろうが、それでもかなり強力な武器だ。
「…ありがとう…。必ず返します!」
そう言った俺の顔を真剣な眼差しが射抜く。
「…必ず、生きて帰ってきてください…。」
俺はセシリーさんに無理やり笑顔を見せてアルベルトに向かう。
「コーキィィィー!!」
背後から、もう一度ひよこさんの声が聞こえる。
俺は振り向かずに軽く手を振り、
「今日のメニュー、ちゃんと考えておけよ!」
そう叫んでいた。
我ながら、バレバレの強がりとは思う。でも、ひよこさんの姿を見たら
一騎打ちに行けなくなるかもしれない。それくらい怖かった。
アルベルトと俺は対峙する。
「…別れのあいさつは終わったか?」
奴はそう言いながら、片手でラブリュスを振り上げる。
奴の身体は決して筋肉ムキムキではない。むしろ均整がとれたスマート
体型と言っても過言ではないだろう。それが片手でラブリュス…。
奴の筋力は化け物並だな。もっともフェニックスや閣下という化け物も見てきたが。
「さて、見せてもらうぞ!貴様がどれほどの兵か!」
開始の合図はない。このセリフとともに突っ込んできやがった。
奴の動きは速い…が、見えないほどではない。奴が水平にラブリュスを振り回すのが
はっきり見えたからデュランダルで受け止める…はずだった。
しかし、現実は受け止めたデュランダルごと俺は身体を吹っ飛ばされた。
よくデュランダルを離さなかったと我ながら関心する。
俺は断頭と言われた意味をはっきりと悟った。
意外にも人間の骨を完全に切断するのはパワーとテクニックを要する。
つまり普通の兵なら首を斬ることはできても、完全に胴体から切断するのは難しい。
しかし、奴のパワーならそれが可能なのだ。
俺は床に這いながら、体中に冷たい汗が流れ鳥肌がたつのを感じている。
…怖い……怖い……怖い…
俺は恐怖を感じていた。
生きて帰るなど不可能なのだと…。
身体が振るえ、自分の意志はすべて死への恐怖に支配されている。
それも、たったの一撃で…だ。
しかし、本能がなせる業なのか、俺はゆっくりと立ち上がる。
そして1歩、また1歩アルベルトに近づいていく。
「ほう!我が一撃で首が離れぬとは、さすがだな。」
奴の言葉が遥か彼方からか、または地獄の底から聞こえてくるように感じる。
俺はなぜ奴に向かって歩いているのだろうか?
もしかしたら、早く楽になりたいのだろうか?
勝ち目がないなら、さっさと首を斬られて終わりにしたいのだろうか?
もう、なんでもいい…早く終わりにしよう…。
俺がいなくてもヤクモがいる。セシリーさんも、ジェニーローズも…。
そうだ、俺はいなくてもいい存在なんだ。…ダカラ、ハヤクラクニナリタイ…
この時の俺はまちがいなく死神に取り付かれていた。
自分で生き残る方法を考える事も、闘うための意志も何もかもなくしていた。
だが…
「コォォーキィィィイーー!!負けたら、負けたら本当にご飯作らないからぁぁあ!!」
…誰?この泣き叫ぶような声は…。
俺はゆっくり後ろを振り向く。
そして俺の目に映ったのは…
…泣いているひよこさんだった。
…泣いている?あのひよこさんが?なぜ?誰のために泣いているの?
誰が泣かした?俺か?俺がひよこさんを泣かした?
俺はなにをしているのだろうか?
俺は、俺は…そうだ、俺は目の前の敵と一騎打ちをしてるんだった。
ここまで考えた時にようやく頭の中の霧が晴れた気がした。
どうやら俺の意識は混濁していたようだ。
あぶねぇ!これじゃ勝てる戦いでも殺されるとこだった。
俺が奴に恐怖を感じてる事は否定しない。しかし、生き残ることを考えるのを
やめちゃダメなのだ。
俺は奴に向かって走り出した。
急に息を吹き返したかのような俺の行動に今度は奴が面食らったようだ。
俺は勢いに乗ってそのまま突きを繰り出す。
俺のデュランダルは奴の左胸をかすっていった。
無理やり避けてよろけるアルベルトに向き直り、一言。
「悪いな。ここからは俺が恐怖を教える番だ!」
だが、奴は俺を睨みつけ、
「笑止!」
そう言って再びラブリュスを構えなおす。
俺たちの間には誰にも入れない重く苦しい緊張が支配していた。
つづく
「コーキさん、これを…。」
そう言ってセシリーさんが俺に一振りの剣を渡す。
「相手があの方では、これでも心もとないでしょうが…。」
そう言われて、改めて受け取った剣を確認する。
「これは…!」
渡されたのは名刀と言ってもいいだろう…デュランダルである。
もちろんレプリカではあるだろうが、それでもかなり強力な武器だ。
「…ありがとう…。必ず返します!」
そう言った俺の顔を真剣な眼差しが射抜く。
「…必ず、生きて帰ってきてください…。」
俺はセシリーさんに無理やり笑顔を見せてアルベルトに向かう。
「コーキィィィー!!」
背後から、もう一度ひよこさんの声が聞こえる。
俺は振り向かずに軽く手を振り、
「今日のメニュー、ちゃんと考えておけよ!」
そう叫んでいた。
我ながら、バレバレの強がりとは思う。でも、ひよこさんの姿を見たら
一騎打ちに行けなくなるかもしれない。それくらい怖かった。
アルベルトと俺は対峙する。
「…別れのあいさつは終わったか?」
奴はそう言いながら、片手でラブリュスを振り上げる。
奴の身体は決して筋肉ムキムキではない。むしろ均整がとれたスマート
体型と言っても過言ではないだろう。それが片手でラブリュス…。
奴の筋力は化け物並だな。もっともフェニックスや閣下という化け物も見てきたが。
「さて、見せてもらうぞ!貴様がどれほどの兵か!」
開始の合図はない。このセリフとともに突っ込んできやがった。
奴の動きは速い…が、見えないほどではない。奴が水平にラブリュスを振り回すのが
はっきり見えたからデュランダルで受け止める…はずだった。
しかし、現実は受け止めたデュランダルごと俺は身体を吹っ飛ばされた。
よくデュランダルを離さなかったと我ながら関心する。
俺は断頭と言われた意味をはっきりと悟った。
意外にも人間の骨を完全に切断するのはパワーとテクニックを要する。
つまり普通の兵なら首を斬ることはできても、完全に胴体から切断するのは難しい。
しかし、奴のパワーならそれが可能なのだ。
俺は床に這いながら、体中に冷たい汗が流れ鳥肌がたつのを感じている。
…怖い……怖い……怖い…
俺は恐怖を感じていた。
生きて帰るなど不可能なのだと…。
身体が振るえ、自分の意志はすべて死への恐怖に支配されている。
それも、たったの一撃で…だ。
しかし、本能がなせる業なのか、俺はゆっくりと立ち上がる。
そして1歩、また1歩アルベルトに近づいていく。
「ほう!我が一撃で首が離れぬとは、さすがだな。」
奴の言葉が遥か彼方からか、または地獄の底から聞こえてくるように感じる。
俺はなぜ奴に向かって歩いているのだろうか?
もしかしたら、早く楽になりたいのだろうか?
勝ち目がないなら、さっさと首を斬られて終わりにしたいのだろうか?
もう、なんでもいい…早く終わりにしよう…。
俺がいなくてもヤクモがいる。セシリーさんも、ジェニーローズも…。
そうだ、俺はいなくてもいい存在なんだ。…ダカラ、ハヤクラクニナリタイ…
この時の俺はまちがいなく死神に取り付かれていた。
自分で生き残る方法を考える事も、闘うための意志も何もかもなくしていた。
だが…
「コォォーキィィィイーー!!負けたら、負けたら本当にご飯作らないからぁぁあ!!」
…誰?この泣き叫ぶような声は…。
俺はゆっくり後ろを振り向く。
そして俺の目に映ったのは…
…泣いているひよこさんだった。
…泣いている?あのひよこさんが?なぜ?誰のために泣いているの?
誰が泣かした?俺か?俺がひよこさんを泣かした?
俺はなにをしているのだろうか?
俺は、俺は…そうだ、俺は目の前の敵と一騎打ちをしてるんだった。
ここまで考えた時にようやく頭の中の霧が晴れた気がした。
どうやら俺の意識は混濁していたようだ。
あぶねぇ!これじゃ勝てる戦いでも殺されるとこだった。
俺が奴に恐怖を感じてる事は否定しない。しかし、生き残ることを考えるのを
やめちゃダメなのだ。
俺は奴に向かって走り出した。
急に息を吹き返したかのような俺の行動に今度は奴が面食らったようだ。
俺は勢いに乗ってそのまま突きを繰り出す。
俺のデュランダルは奴の左胸をかすっていった。
無理やり避けてよろけるアルベルトに向き直り、一言。
「悪いな。ここからは俺が恐怖を教える番だ!」
だが、奴は俺を睨みつけ、
「笑止!」
そう言って再びラブリュスを構えなおす。
俺たちの間には誰にも入れない重く苦しい緊張が支配していた。
つづく
第18話 船長…だから…
生きていたマリアルメル。そして援軍として現れたセシリーさんとジェニーローズ。
さらに姿はまだ見せていないが、どこからか銃で支援してくれるSakurakoさん。
俺は彼女達と共に反撃を開始した。
マリアルメルが奴らの塊になっているところへ何本も投げナイフをぶち込み、
それを避けるように散っていった連中をセシリーさんやジェニーローズが切り込んでいく。
特にジェニーさんの一振りでおそらく4〜5人は戦闘不能になっているだろう。
だが、そんなもんに目を奪われてる暇はない。
敵にすれば一番のターゲットは俺とひよこさんだ。
一番多数の敵が怒涛のごとく押し寄せてきやがる。
俺はその攻撃をかいくぐり、ついでに同士討ちを誘うような動きをする。
案の定奴ら同士討ちを恐れて動きが鈍ってやがる。さらに、ひよこさんもこのレベルが相手なら、どうやら闘えるらしく、何人かは殺すことはできなくても牽制はできているようだ。
徐々にではあるが敵から数の優位性がなくなっていく。
ジェニーさんやセシリーさん、さらにSakurakoさんまでいれば100人の船員がいるのと変わりないのかもしれない。
その上マリアルメルの投げナイフが敵を的確に倒していき、それが敵陣にさらなる恐怖をあおっていた。
…勝てる…
心の中でそう確信した時…
「やめぇぇいぃぃぃ!!!」
敵味方すべての動きを止める声が船上に響く。
声の主はアルベルト大佐だった。
「双方ともやめぇいぃ!」
再びそう叫んでから、
「セビリアのSakurako殿!そろそろマストから降りてきてはいかがか?」
そう言ってメインマストのほうに顔を向ける。
すると何かを察したのか銃を持ったSakurakoさんがロープを使ってマスト上方から降りてくる。
Sakurakoさんが降り立ったのを見計らって、アルベルトが再び口を開く。
「ふん、なるほど。元大海賊クレイジーローズ…」
この言葉を聞いた瞬間にジェニーさんがあからさまに不機嫌な表情になる。
後で殺されてもし〜らないっと。
「それからイングランドの戦姫…。さらにセビリアのサロン主催者にしてイスパニアリーダー格の一人Sakurako…。さらに裏切り者ではあるが、投げナイフではピカ一の腕を持つマリアルメル。確かにこのメンバーでは我が部隊といえど無傷ではすまんとは思ったが…。」
ここまで言ってから俺の方に向き直る。なんだ、ビビってあやまるのか?
「わからない…。なぜこれほどの人物達が貴様の下にいるのか?」
いや、彼女たちは俺の部下じゃないんですが…
「貴様はそれほど優れた船長なのか?それほどに強いのか?」
いやいや、私は彼女たちの足元にも及びませんが…
「そこで提案だ!貴様に一騎打ちを申し込みたい。」
ふーん、一騎打ちねぇ、って、まて。もしかして俺があんたと一騎打ちか?
「コーキ、やめとけ!あんたじゃ勝てない!あたしが受けるよ!」
こう言ったのはジェニーさんだ。言ってる内容には少しひっかかるが提案はありがたい。
よし、ここはジェニーさんに譲ろう…。
「ダメです!ジェニーローズさん!」
こう言ってジェニーさんを制したのは…セシリーさんだ。
「一騎打ちをいどまれたのはコーキさんです。彼が今はあたし達の船長である以上は、彼の一騎打ちには私たちは邪魔をするわけにはいきません。それが船乗りのルールでしょ?」
グサッ…正論だ、反論の余地がねぇ。
し、しかたねぇ受けるしかないのか…。
「わかった。俺も船長をしてる以上逃げるわけにはいかねぇ。受けてやる!」
俺はアルベルトを見据えながら、はっきりとした口調で一騎打ちを受けた。
「コーキ、あんた負けたら1週間メシ抜きだからね!」
ひよこさんから、ありがた〜い激励を受ける。断っておくが一騎打ちに負けるということは…
即死につながるって事だ。もう食事をする必要もなくなるってわけだな。
でも…それが、ひよこさんなりの激励とわかるのは、口調はきびしくても今にも泣き出しそうな表情でわかる。まかせろ、伊達にひよこさんになぐられ続けてきたわけじゃない。かなり打撃に対しての耐久性は着いているはずだ。
こうして一騎打ちに向けてテンションを上げている俺にマリアルメルが近づいて耳打ちする。
「気を付けなさいよ。知ってる?彼は断頭のアルベルトと言われてるの。せいぜい、頭が胴体から離れないようにするのよ。」
おい、そんなことは早く教えてくれ!
俺、生き残ることができるか?
つづく
さらに姿はまだ見せていないが、どこからか銃で支援してくれるSakurakoさん。
俺は彼女達と共に反撃を開始した。
マリアルメルが奴らの塊になっているところへ何本も投げナイフをぶち込み、
それを避けるように散っていった連中をセシリーさんやジェニーローズが切り込んでいく。
特にジェニーさんの一振りでおそらく4〜5人は戦闘不能になっているだろう。
だが、そんなもんに目を奪われてる暇はない。
敵にすれば一番のターゲットは俺とひよこさんだ。
一番多数の敵が怒涛のごとく押し寄せてきやがる。
俺はその攻撃をかいくぐり、ついでに同士討ちを誘うような動きをする。
案の定奴ら同士討ちを恐れて動きが鈍ってやがる。さらに、ひよこさんもこのレベルが相手なら、どうやら闘えるらしく、何人かは殺すことはできなくても牽制はできているようだ。
徐々にではあるが敵から数の優位性がなくなっていく。
ジェニーさんやセシリーさん、さらにSakurakoさんまでいれば100人の船員がいるのと変わりないのかもしれない。
その上マリアルメルの投げナイフが敵を的確に倒していき、それが敵陣にさらなる恐怖をあおっていた。
…勝てる…
心の中でそう確信した時…
「やめぇぇいぃぃぃ!!!」
敵味方すべての動きを止める声が船上に響く。
声の主はアルベルト大佐だった。
「双方ともやめぇいぃ!」
再びそう叫んでから、
「セビリアのSakurako殿!そろそろマストから降りてきてはいかがか?」
そう言ってメインマストのほうに顔を向ける。
すると何かを察したのか銃を持ったSakurakoさんがロープを使ってマスト上方から降りてくる。
Sakurakoさんが降り立ったのを見計らって、アルベルトが再び口を開く。
「ふん、なるほど。元大海賊クレイジーローズ…」
この言葉を聞いた瞬間にジェニーさんがあからさまに不機嫌な表情になる。
後で殺されてもし〜らないっと。
「それからイングランドの戦姫…。さらにセビリアのサロン主催者にしてイスパニアリーダー格の一人Sakurako…。さらに裏切り者ではあるが、投げナイフではピカ一の腕を持つマリアルメル。確かにこのメンバーでは我が部隊といえど無傷ではすまんとは思ったが…。」
ここまで言ってから俺の方に向き直る。なんだ、ビビってあやまるのか?
「わからない…。なぜこれほどの人物達が貴様の下にいるのか?」
いや、彼女たちは俺の部下じゃないんですが…
「貴様はそれほど優れた船長なのか?それほどに強いのか?」
いやいや、私は彼女たちの足元にも及びませんが…
「そこで提案だ!貴様に一騎打ちを申し込みたい。」
ふーん、一騎打ちねぇ、って、まて。もしかして俺があんたと一騎打ちか?
「コーキ、やめとけ!あんたじゃ勝てない!あたしが受けるよ!」
こう言ったのはジェニーさんだ。言ってる内容には少しひっかかるが提案はありがたい。
よし、ここはジェニーさんに譲ろう…。
「ダメです!ジェニーローズさん!」
こう言ってジェニーさんを制したのは…セシリーさんだ。
「一騎打ちをいどまれたのはコーキさんです。彼が今はあたし達の船長である以上は、彼の一騎打ちには私たちは邪魔をするわけにはいきません。それが船乗りのルールでしょ?」
グサッ…正論だ、反論の余地がねぇ。
し、しかたねぇ受けるしかないのか…。
「わかった。俺も船長をしてる以上逃げるわけにはいかねぇ。受けてやる!」
俺はアルベルトを見据えながら、はっきりとした口調で一騎打ちを受けた。
「コーキ、あんた負けたら1週間メシ抜きだからね!」
ひよこさんから、ありがた〜い激励を受ける。断っておくが一騎打ちに負けるということは…
即死につながるって事だ。もう食事をする必要もなくなるってわけだな。
でも…それが、ひよこさんなりの激励とわかるのは、口調はきびしくても今にも泣き出しそうな表情でわかる。まかせろ、伊達にひよこさんになぐられ続けてきたわけじゃない。かなり打撃に対しての耐久性は着いているはずだ。
こうして一騎打ちに向けてテンションを上げている俺にマリアルメルが近づいて耳打ちする。
「気を付けなさいよ。知ってる?彼は断頭のアルベルトと言われてるの。せいぜい、頭が胴体から離れないようにするのよ。」
おい、そんなことは早く教えてくれ!
俺、生き残ることができるか?
つづく



