小説 大航海時代オンライン サルベージャー
大航海時代オンライン能登鯖で遊んでるコーキです。 これまでの内容はこちらを参照! http://ameblo.jp/tokusya2ka/ よろしくです<(_ _)>
第19話 断頭のアルベルト
セシリーさんが無言で俺に近づいてきて
「コーキさん、これを…。」
そう言ってセシリーさんが俺に一振りの剣を渡す。
「相手があの方では、これでも心もとないでしょうが…。」
そう言われて、改めて受け取った剣を確認する。
「これは…!」
渡されたのは名刀と言ってもいいだろう…デュランダルである。
もちろんレプリカではあるだろうが、それでもかなり強力な武器だ。
「…ありがとう…。必ず返します!」
そう言った俺の顔を真剣な眼差しが射抜く。
「…必ず、生きて帰ってきてください…。」
俺はセシリーさんに無理やり笑顔を見せてアルベルトに向かう。
「コーキィィィー!!」
背後から、もう一度ひよこさんの声が聞こえる。
俺は振り向かずに軽く手を振り、
「今日のメニュー、ちゃんと考えておけよ!」
そう叫んでいた。
我ながら、バレバレの強がりとは思う。でも、ひよこさんの姿を見たら
一騎打ちに行けなくなるかもしれない。それくらい怖かった。
アルベルトと俺は対峙する。
「…別れのあいさつは終わったか?」
奴はそう言いながら、片手でラブリュスを振り上げる。
奴の身体は決して筋肉ムキムキではない。むしろ均整がとれたスマート
体型と言っても過言ではないだろう。それが片手でラブリュス…。
奴の筋力は化け物並だな。もっともフェニックスや閣下という化け物も見てきたが。
「さて、見せてもらうぞ!貴様がどれほどの兵か!」
開始の合図はない。このセリフとともに突っ込んできやがった。
奴の動きは速い…が、見えないほどではない。奴が水平にラブリュスを振り回すのが
はっきり見えたからデュランダルで受け止める…はずだった。
しかし、現実は受け止めたデュランダルごと俺は身体を吹っ飛ばされた。
よくデュランダルを離さなかったと我ながら関心する。
俺は断頭と言われた意味をはっきりと悟った。
意外にも人間の骨を完全に切断するのはパワーとテクニックを要する。
つまり普通の兵なら首を斬ることはできても、完全に胴体から切断するのは難しい。
しかし、奴のパワーならそれが可能なのだ。
俺は床に這いながら、体中に冷たい汗が流れ鳥肌がたつのを感じている。
…怖い……怖い……怖い…
俺は恐怖を感じていた。
生きて帰るなど不可能なのだと…。
身体が振るえ、自分の意志はすべて死への恐怖に支配されている。
それも、たったの一撃で…だ。
しかし、本能がなせる業なのか、俺はゆっくりと立ち上がる。
そして1歩、また1歩アルベルトに近づいていく。
「ほう!我が一撃で首が離れぬとは、さすがだな。」
奴の言葉が遥か彼方からか、または地獄の底から聞こえてくるように感じる。
俺はなぜ奴に向かって歩いているのだろうか?
もしかしたら、早く楽になりたいのだろうか?
勝ち目がないなら、さっさと首を斬られて終わりにしたいのだろうか?
もう、なんでもいい…早く終わりにしよう…。
俺がいなくてもヤクモがいる。セシリーさんも、ジェニーローズも…。
そうだ、俺はいなくてもいい存在なんだ。…ダカラ、ハヤクラクニナリタイ…
この時の俺はまちがいなく死神に取り付かれていた。
自分で生き残る方法を考える事も、闘うための意志も何もかもなくしていた。
だが…
「コォォーキィィィイーー!!負けたら、負けたら本当にご飯作らないからぁぁあ!!」
…誰?この泣き叫ぶような声は…。
俺はゆっくり後ろを振り向く。
そして俺の目に映ったのは…
…泣いているひよこさんだった。
…泣いている?あのひよこさんが?なぜ?誰のために泣いているの?
誰が泣かした?俺か?俺がひよこさんを泣かした?
俺はなにをしているのだろうか?
俺は、俺は…そうだ、俺は目の前の敵と一騎打ちをしてるんだった。
ここまで考えた時にようやく頭の中の霧が晴れた気がした。
どうやら俺の意識は混濁していたようだ。
あぶねぇ!これじゃ勝てる戦いでも殺されるとこだった。
俺が奴に恐怖を感じてる事は否定しない。しかし、生き残ることを考えるのを
やめちゃダメなのだ。
俺は奴に向かって走り出した。
急に息を吹き返したかのような俺の行動に今度は奴が面食らったようだ。
俺は勢いに乗ってそのまま突きを繰り出す。
俺のデュランダルは奴の左胸をかすっていった。
無理やり避けてよろけるアルベルトに向き直り、一言。
「悪いな。ここからは俺が恐怖を教える番だ!」
だが、奴は俺を睨みつけ、
「笑止!」
そう言って再びラブリュスを構えなおす。
俺たちの間には誰にも入れない重く苦しい緊張が支配していた。
つづく
「コーキさん、これを…。」
そう言ってセシリーさんが俺に一振りの剣を渡す。
「相手があの方では、これでも心もとないでしょうが…。」
そう言われて、改めて受け取った剣を確認する。
「これは…!」
渡されたのは名刀と言ってもいいだろう…デュランダルである。
もちろんレプリカではあるだろうが、それでもかなり強力な武器だ。
「…ありがとう…。必ず返します!」
そう言った俺の顔を真剣な眼差しが射抜く。
「…必ず、生きて帰ってきてください…。」
俺はセシリーさんに無理やり笑顔を見せてアルベルトに向かう。
「コーキィィィー!!」
背後から、もう一度ひよこさんの声が聞こえる。
俺は振り向かずに軽く手を振り、
「今日のメニュー、ちゃんと考えておけよ!」
そう叫んでいた。
我ながら、バレバレの強がりとは思う。でも、ひよこさんの姿を見たら
一騎打ちに行けなくなるかもしれない。それくらい怖かった。
アルベルトと俺は対峙する。
「…別れのあいさつは終わったか?」
奴はそう言いながら、片手でラブリュスを振り上げる。
奴の身体は決して筋肉ムキムキではない。むしろ均整がとれたスマート
体型と言っても過言ではないだろう。それが片手でラブリュス…。
奴の筋力は化け物並だな。もっともフェニックスや閣下という化け物も見てきたが。
「さて、見せてもらうぞ!貴様がどれほどの兵か!」
開始の合図はない。このセリフとともに突っ込んできやがった。
奴の動きは速い…が、見えないほどではない。奴が水平にラブリュスを振り回すのが
はっきり見えたからデュランダルで受け止める…はずだった。
しかし、現実は受け止めたデュランダルごと俺は身体を吹っ飛ばされた。
よくデュランダルを離さなかったと我ながら関心する。
俺は断頭と言われた意味をはっきりと悟った。
意外にも人間の骨を完全に切断するのはパワーとテクニックを要する。
つまり普通の兵なら首を斬ることはできても、完全に胴体から切断するのは難しい。
しかし、奴のパワーならそれが可能なのだ。
俺は床に這いながら、体中に冷たい汗が流れ鳥肌がたつのを感じている。
…怖い……怖い……怖い…
俺は恐怖を感じていた。
生きて帰るなど不可能なのだと…。
身体が振るえ、自分の意志はすべて死への恐怖に支配されている。
それも、たったの一撃で…だ。
しかし、本能がなせる業なのか、俺はゆっくりと立ち上がる。
そして1歩、また1歩アルベルトに近づいていく。
「ほう!我が一撃で首が離れぬとは、さすがだな。」
奴の言葉が遥か彼方からか、または地獄の底から聞こえてくるように感じる。
俺はなぜ奴に向かって歩いているのだろうか?
もしかしたら、早く楽になりたいのだろうか?
勝ち目がないなら、さっさと首を斬られて終わりにしたいのだろうか?
もう、なんでもいい…早く終わりにしよう…。
俺がいなくてもヤクモがいる。セシリーさんも、ジェニーローズも…。
そうだ、俺はいなくてもいい存在なんだ。…ダカラ、ハヤクラクニナリタイ…
この時の俺はまちがいなく死神に取り付かれていた。
自分で生き残る方法を考える事も、闘うための意志も何もかもなくしていた。
だが…
「コォォーキィィィイーー!!負けたら、負けたら本当にご飯作らないからぁぁあ!!」
…誰?この泣き叫ぶような声は…。
俺はゆっくり後ろを振り向く。
そして俺の目に映ったのは…
…泣いているひよこさんだった。
…泣いている?あのひよこさんが?なぜ?誰のために泣いているの?
誰が泣かした?俺か?俺がひよこさんを泣かした?
俺はなにをしているのだろうか?
俺は、俺は…そうだ、俺は目の前の敵と一騎打ちをしてるんだった。
ここまで考えた時にようやく頭の中の霧が晴れた気がした。
どうやら俺の意識は混濁していたようだ。
あぶねぇ!これじゃ勝てる戦いでも殺されるとこだった。
俺が奴に恐怖を感じてる事は否定しない。しかし、生き残ることを考えるのを
やめちゃダメなのだ。
俺は奴に向かって走り出した。
急に息を吹き返したかのような俺の行動に今度は奴が面食らったようだ。
俺は勢いに乗ってそのまま突きを繰り出す。
俺のデュランダルは奴の左胸をかすっていった。
無理やり避けてよろけるアルベルトに向き直り、一言。
「悪いな。ここからは俺が恐怖を教える番だ!」
だが、奴は俺を睨みつけ、
「笑止!」
そう言って再びラブリュスを構えなおす。
俺たちの間には誰にも入れない重く苦しい緊張が支配していた。
つづく
第18話 船長…だから…
生きていたマリアルメル。そして援軍として現れたセシリーさんとジェニーローズ。
さらに姿はまだ見せていないが、どこからか銃で支援してくれるSakurakoさん。
俺は彼女達と共に反撃を開始した。
マリアルメルが奴らの塊になっているところへ何本も投げナイフをぶち込み、
それを避けるように散っていった連中をセシリーさんやジェニーローズが切り込んでいく。
特にジェニーさんの一振りでおそらく4〜5人は戦闘不能になっているだろう。
だが、そんなもんに目を奪われてる暇はない。
敵にすれば一番のターゲットは俺とひよこさんだ。
一番多数の敵が怒涛のごとく押し寄せてきやがる。
俺はその攻撃をかいくぐり、ついでに同士討ちを誘うような動きをする。
案の定奴ら同士討ちを恐れて動きが鈍ってやがる。さらに、ひよこさんもこのレベルが相手なら、どうやら闘えるらしく、何人かは殺すことはできなくても牽制はできているようだ。
徐々にではあるが敵から数の優位性がなくなっていく。
ジェニーさんやセシリーさん、さらにSakurakoさんまでいれば100人の船員がいるのと変わりないのかもしれない。
その上マリアルメルの投げナイフが敵を的確に倒していき、それが敵陣にさらなる恐怖をあおっていた。
…勝てる…
心の中でそう確信した時…
「やめぇぇいぃぃぃ!!!」
敵味方すべての動きを止める声が船上に響く。
声の主はアルベルト大佐だった。
「双方ともやめぇいぃ!」
再びそう叫んでから、
「セビリアのSakurako殿!そろそろマストから降りてきてはいかがか?」
そう言ってメインマストのほうに顔を向ける。
すると何かを察したのか銃を持ったSakurakoさんがロープを使ってマスト上方から降りてくる。
Sakurakoさんが降り立ったのを見計らって、アルベルトが再び口を開く。
「ふん、なるほど。元大海賊クレイジーローズ…」
この言葉を聞いた瞬間にジェニーさんがあからさまに不機嫌な表情になる。
後で殺されてもし〜らないっと。
「それからイングランドの戦姫…。さらにセビリアのサロン主催者にしてイスパニアリーダー格の一人Sakurako…。さらに裏切り者ではあるが、投げナイフではピカ一の腕を持つマリアルメル。確かにこのメンバーでは我が部隊といえど無傷ではすまんとは思ったが…。」
ここまで言ってから俺の方に向き直る。なんだ、ビビってあやまるのか?
「わからない…。なぜこれほどの人物達が貴様の下にいるのか?」
いや、彼女たちは俺の部下じゃないんですが…
「貴様はそれほど優れた船長なのか?それほどに強いのか?」
いやいや、私は彼女たちの足元にも及びませんが…
「そこで提案だ!貴様に一騎打ちを申し込みたい。」
ふーん、一騎打ちねぇ、って、まて。もしかして俺があんたと一騎打ちか?
「コーキ、やめとけ!あんたじゃ勝てない!あたしが受けるよ!」
こう言ったのはジェニーさんだ。言ってる内容には少しひっかかるが提案はありがたい。
よし、ここはジェニーさんに譲ろう…。
「ダメです!ジェニーローズさん!」
こう言ってジェニーさんを制したのは…セシリーさんだ。
「一騎打ちをいどまれたのはコーキさんです。彼が今はあたし達の船長である以上は、彼の一騎打ちには私たちは邪魔をするわけにはいきません。それが船乗りのルールでしょ?」
グサッ…正論だ、反論の余地がねぇ。
し、しかたねぇ受けるしかないのか…。
「わかった。俺も船長をしてる以上逃げるわけにはいかねぇ。受けてやる!」
俺はアルベルトを見据えながら、はっきりとした口調で一騎打ちを受けた。
「コーキ、あんた負けたら1週間メシ抜きだからね!」
ひよこさんから、ありがた〜い激励を受ける。断っておくが一騎打ちに負けるということは…
即死につながるって事だ。もう食事をする必要もなくなるってわけだな。
でも…それが、ひよこさんなりの激励とわかるのは、口調はきびしくても今にも泣き出しそうな表情でわかる。まかせろ、伊達にひよこさんになぐられ続けてきたわけじゃない。かなり打撃に対しての耐久性は着いているはずだ。
こうして一騎打ちに向けてテンションを上げている俺にマリアルメルが近づいて耳打ちする。
「気を付けなさいよ。知ってる?彼は断頭のアルベルトと言われてるの。せいぜい、頭が胴体から離れないようにするのよ。」
おい、そんなことは早く教えてくれ!
俺、生き残ることができるか?
つづく
さらに姿はまだ見せていないが、どこからか銃で支援してくれるSakurakoさん。
俺は彼女達と共に反撃を開始した。
マリアルメルが奴らの塊になっているところへ何本も投げナイフをぶち込み、
それを避けるように散っていった連中をセシリーさんやジェニーローズが切り込んでいく。
特にジェニーさんの一振りでおそらく4〜5人は戦闘不能になっているだろう。
だが、そんなもんに目を奪われてる暇はない。
敵にすれば一番のターゲットは俺とひよこさんだ。
一番多数の敵が怒涛のごとく押し寄せてきやがる。
俺はその攻撃をかいくぐり、ついでに同士討ちを誘うような動きをする。
案の定奴ら同士討ちを恐れて動きが鈍ってやがる。さらに、ひよこさんもこのレベルが相手なら、どうやら闘えるらしく、何人かは殺すことはできなくても牽制はできているようだ。
徐々にではあるが敵から数の優位性がなくなっていく。
ジェニーさんやセシリーさん、さらにSakurakoさんまでいれば100人の船員がいるのと変わりないのかもしれない。
その上マリアルメルの投げナイフが敵を的確に倒していき、それが敵陣にさらなる恐怖をあおっていた。
…勝てる…
心の中でそう確信した時…
「やめぇぇいぃぃぃ!!!」
敵味方すべての動きを止める声が船上に響く。
声の主はアルベルト大佐だった。
「双方ともやめぇいぃ!」
再びそう叫んでから、
「セビリアのSakurako殿!そろそろマストから降りてきてはいかがか?」
そう言ってメインマストのほうに顔を向ける。
すると何かを察したのか銃を持ったSakurakoさんがロープを使ってマスト上方から降りてくる。
Sakurakoさんが降り立ったのを見計らって、アルベルトが再び口を開く。
「ふん、なるほど。元大海賊クレイジーローズ…」
この言葉を聞いた瞬間にジェニーさんがあからさまに不機嫌な表情になる。
後で殺されてもし〜らないっと。
「それからイングランドの戦姫…。さらにセビリアのサロン主催者にしてイスパニアリーダー格の一人Sakurako…。さらに裏切り者ではあるが、投げナイフではピカ一の腕を持つマリアルメル。確かにこのメンバーでは我が部隊といえど無傷ではすまんとは思ったが…。」
ここまで言ってから俺の方に向き直る。なんだ、ビビってあやまるのか?
「わからない…。なぜこれほどの人物達が貴様の下にいるのか?」
いや、彼女たちは俺の部下じゃないんですが…
「貴様はそれほど優れた船長なのか?それほどに強いのか?」
いやいや、私は彼女たちの足元にも及びませんが…
「そこで提案だ!貴様に一騎打ちを申し込みたい。」
ふーん、一騎打ちねぇ、って、まて。もしかして俺があんたと一騎打ちか?
「コーキ、やめとけ!あんたじゃ勝てない!あたしが受けるよ!」
こう言ったのはジェニーさんだ。言ってる内容には少しひっかかるが提案はありがたい。
よし、ここはジェニーさんに譲ろう…。
「ダメです!ジェニーローズさん!」
こう言ってジェニーさんを制したのは…セシリーさんだ。
「一騎打ちをいどまれたのはコーキさんです。彼が今はあたし達の船長である以上は、彼の一騎打ちには私たちは邪魔をするわけにはいきません。それが船乗りのルールでしょ?」
グサッ…正論だ、反論の余地がねぇ。
し、しかたねぇ受けるしかないのか…。
「わかった。俺も船長をしてる以上逃げるわけにはいかねぇ。受けてやる!」
俺はアルベルトを見据えながら、はっきりとした口調で一騎打ちを受けた。
「コーキ、あんた負けたら1週間メシ抜きだからね!」
ひよこさんから、ありがた〜い激励を受ける。断っておくが一騎打ちに負けるということは…
即死につながるって事だ。もう食事をする必要もなくなるってわけだな。
でも…それが、ひよこさんなりの激励とわかるのは、口調はきびしくても今にも泣き出しそうな表情でわかる。まかせろ、伊達にひよこさんになぐられ続けてきたわけじゃない。かなり打撃に対しての耐久性は着いているはずだ。
こうして一騎打ちに向けてテンションを上げている俺にマリアルメルが近づいて耳打ちする。
「気を付けなさいよ。知ってる?彼は断頭のアルベルトと言われてるの。せいぜい、頭が胴体から離れないようにするのよ。」
おい、そんなことは早く教えてくれ!
俺、生き残ることができるか?
つづく
第17話 反撃開始
さてさて、船倉の中でどうしようか思案してると、チャンスは向こうからやってきた。
扉の向こうから気配を感じる。どうやら食事を運んできたようだ。
そして扉が開いた瞬間にミドルキックを放つ。
敵は見事に前のめりになって崩れ落ちる。
よし、脱出といきこんだ瞬間に目の前を剣が横切った。
あぶねぇ、もう一人いたか。
「きさまぁ〜!どうやって縄をはずした?」
敵が剣を振り上げながら俺にすごむ。
ちぃ、どうする、こっちは丸腰。いや、カミソリだけ持ってたか。
ドゴッ!!
ものすごい音がしてから敵がゆっくりと俺に向かって倒れる。
その向こうには、これまたものすごい表情をして左ストレートを出した後らしいひよこさんの姿が見えた。
そして、状況がわからないのか、俺と認識できないのか…。
ドゴッ!!
俺はひよこさんの右ストレートを顔面に食らって倒れた。
これは、その後のひよこさんが俺に言った言葉…。
「あんた、なに倒れてんのよ!早くメルルンの仇を討ちに行くわよ!!」
おーい、誰のせいだよ。
船倉から飛び出した俺たちは敵から奪ったロングソードで敵を斬り付けどんどん外へと向かっていく。
そして外へとついにたどり着いた俺たちが見たものは…。
アルベルト大佐と愉快な部下たちだよ。
「きさまら、どうやってここまで来たのかは知らんが…ごくろうだったな。」
ちぃ、人を見下した目で見やがって。
剣を構え奴等と距離をとろうとする俺とひよこさん。
しかし、奴らはじわじわとこちらに近づきやがる。
俺の背中に冷たい汗が流れる。
しかし、それでもせめてひよこさんだけでも逃がしたい。
なんて考えは俺らしくないか…。だが多勢に無勢、手の打ち様がねぇ。
俺はひよこさんに小声で話す。
「いいか、俺が敵に斬り込むから、その間に海へ飛び込め。」
だが、ひよこさんは首を横に振り、
「いやよ!メルルンの仇をとるまで、絶対に逃げない!」
すげぇな、強い決意の目をしてやがる。
しゃあないな、俺の命があるうちは、なにが何でも守ってやるか。
俺はロングソードを構え敵の攻撃に備える。
だが、奴の部下の一人が前にしゃしゃり出てくる。
「大佐、せっかくですから奴らで余興を楽しみませんか?」
そいつはアルベルトにそう言うと投げナイフを3本ばかり取り出しニタリと笑いやがった。
さて、どんな見世物が見られるのか、まさか3本ともただ俺たちに投げる…なんて芸のない事はしないよな?
そいつは両手で3本のうちの2本を投げる。それも俺たちとは別方向に。
1本はマストに、もう1本も船体に刺さっている。
そして3本目が投げられた。
そのナイフはマストの刺さったナイフに当たり方向を変える。
次に船体に刺さったナイフにはじかれ回転しながら、俺の足元に刺さった。
「がはは!どうだ、ビビっただろう?今度はお前の脳天に刺してやるよ!」
なるほど、奴はナイフを何かに弾かせて別の角度からナイフを飛ばしてくるわけか。
1本しかそれをコントロールできないのなら、別に怖くないが数本同時にこられたらやっかいだな。
そんな事を考えていたら、どこからか拍手が聞こえてきた。
そしてフォアマストの影からソンブレロをかぶった女性が姿を現す。
「すごいわねぇ、あなた。でも、その程度の腕では世界で2番目ね。」
ところが、それを聞いた奴が怒鳴り散らす。
「なんだとぉ!じゃあ、誰が一番だって言うんだ?」
その言葉を聞いた女性が静かに自分を指差した。
そしてナイフを4本取り出しメインマストへ投げつける。
そして上から順番に4本が突き刺さる。
そして1番下に刺さったナイフに向けて再びナイフを投げる。
下のナイフに当たったナイフが回転しながら1段上のナイフに当たり、さらに回転を速めながら、もう1段上のナイフへ、そして最上段に刺さったナイフへと向かっていく。
そして最上段のナイフに当たったナイフは回転を止め一直線にナイフ使いの額に向かい突き刺さる。「あら、失礼。これじゃ世界で2番目でもなくなったわね。」
女性は悪びれることもなく言い放つ。
その様子を見ていたアルベルトが苦々しく言った。
「どうやって脱出した?マリアルメル。」
その言葉を受けて女性がソンブレロを投げ捨てる。
その顔、姿はまぎれもなくマリアルメルその人だった。
「…メルルン…、よかった、生きてた…。」
ひよこさんがその場に座り込んで泣き始める。
えーい、今は戦闘中だ、喜ぶのはこのピンチを脱してからじゃ!
そんな俺たちをちらっと見てから、マリアルメルが言う。
「愛ある限り戦いましょう。命燃え尽きるまで!美女冒険家、マリアルメル!」
………
頭痛くなってきた…。
この姉さん、こんなノリの人だったのか…。
「って冗談はさておいて。大佐、なぜあたしを殺そうとしたの?返答しだいじゃ許さないわ。」
どうやらこの言葉はマジらしい。なんせ迫力が違う。
「…貴様、我々にだまって、そこの小娘を連れて行こうとしただろう。」
「あら、バレてたのね。悪いけど、ひよこさんは友達なの。あなたたちの自由にはさせないわ。」
そう言うやいなや投げナイフを数本投げたらしく数人がうめき声をあげて倒れる。
それと同時に別方向からも斬り込んで来る人影が2つ。
「コーキさん、ひよこさん、ご無事ですか?」
「コーキなにやってんの?とっとすませて帰るわよ!」
斬り込んできたのはセシリーさんとジェニーローズだった。
そして銃声が響き、敵がまた一人倒れる。これはSakurakoさんか…。
どうやら俺についてるのは女難じゃなくて女神様たちだったようだな。
そして反撃が始まった。
つづく
扉の向こうから気配を感じる。どうやら食事を運んできたようだ。
そして扉が開いた瞬間にミドルキックを放つ。
敵は見事に前のめりになって崩れ落ちる。
よし、脱出といきこんだ瞬間に目の前を剣が横切った。
あぶねぇ、もう一人いたか。
「きさまぁ〜!どうやって縄をはずした?」
敵が剣を振り上げながら俺にすごむ。
ちぃ、どうする、こっちは丸腰。いや、カミソリだけ持ってたか。
ドゴッ!!
ものすごい音がしてから敵がゆっくりと俺に向かって倒れる。
その向こうには、これまたものすごい表情をして左ストレートを出した後らしいひよこさんの姿が見えた。
そして、状況がわからないのか、俺と認識できないのか…。
ドゴッ!!
俺はひよこさんの右ストレートを顔面に食らって倒れた。
これは、その後のひよこさんが俺に言った言葉…。
「あんた、なに倒れてんのよ!早くメルルンの仇を討ちに行くわよ!!」
おーい、誰のせいだよ。
船倉から飛び出した俺たちは敵から奪ったロングソードで敵を斬り付けどんどん外へと向かっていく。
そして外へとついにたどり着いた俺たちが見たものは…。
アルベルト大佐と愉快な部下たちだよ。
「きさまら、どうやってここまで来たのかは知らんが…ごくろうだったな。」
ちぃ、人を見下した目で見やがって。
剣を構え奴等と距離をとろうとする俺とひよこさん。
しかし、奴らはじわじわとこちらに近づきやがる。
俺の背中に冷たい汗が流れる。
しかし、それでもせめてひよこさんだけでも逃がしたい。
なんて考えは俺らしくないか…。だが多勢に無勢、手の打ち様がねぇ。
俺はひよこさんに小声で話す。
「いいか、俺が敵に斬り込むから、その間に海へ飛び込め。」
だが、ひよこさんは首を横に振り、
「いやよ!メルルンの仇をとるまで、絶対に逃げない!」
すげぇな、強い決意の目をしてやがる。
しゃあないな、俺の命があるうちは、なにが何でも守ってやるか。
俺はロングソードを構え敵の攻撃に備える。
だが、奴の部下の一人が前にしゃしゃり出てくる。
「大佐、せっかくですから奴らで余興を楽しみませんか?」
そいつはアルベルトにそう言うと投げナイフを3本ばかり取り出しニタリと笑いやがった。
さて、どんな見世物が見られるのか、まさか3本ともただ俺たちに投げる…なんて芸のない事はしないよな?
そいつは両手で3本のうちの2本を投げる。それも俺たちとは別方向に。
1本はマストに、もう1本も船体に刺さっている。
そして3本目が投げられた。
そのナイフはマストの刺さったナイフに当たり方向を変える。
次に船体に刺さったナイフにはじかれ回転しながら、俺の足元に刺さった。
「がはは!どうだ、ビビっただろう?今度はお前の脳天に刺してやるよ!」
なるほど、奴はナイフを何かに弾かせて別の角度からナイフを飛ばしてくるわけか。
1本しかそれをコントロールできないのなら、別に怖くないが数本同時にこられたらやっかいだな。
そんな事を考えていたら、どこからか拍手が聞こえてきた。
そしてフォアマストの影からソンブレロをかぶった女性が姿を現す。
「すごいわねぇ、あなた。でも、その程度の腕では世界で2番目ね。」
ところが、それを聞いた奴が怒鳴り散らす。
「なんだとぉ!じゃあ、誰が一番だって言うんだ?」
その言葉を聞いた女性が静かに自分を指差した。
そしてナイフを4本取り出しメインマストへ投げつける。
そして上から順番に4本が突き刺さる。
そして1番下に刺さったナイフに向けて再びナイフを投げる。
下のナイフに当たったナイフが回転しながら1段上のナイフに当たり、さらに回転を速めながら、もう1段上のナイフへ、そして最上段に刺さったナイフへと向かっていく。
そして最上段のナイフに当たったナイフは回転を止め一直線にナイフ使いの額に向かい突き刺さる。「あら、失礼。これじゃ世界で2番目でもなくなったわね。」
女性は悪びれることもなく言い放つ。
その様子を見ていたアルベルトが苦々しく言った。
「どうやって脱出した?マリアルメル。」
その言葉を受けて女性がソンブレロを投げ捨てる。
その顔、姿はまぎれもなくマリアルメルその人だった。
「…メルルン…、よかった、生きてた…。」
ひよこさんがその場に座り込んで泣き始める。
えーい、今は戦闘中だ、喜ぶのはこのピンチを脱してからじゃ!
そんな俺たちをちらっと見てから、マリアルメルが言う。
「愛ある限り戦いましょう。命燃え尽きるまで!美女冒険家、マリアルメル!」
………
頭痛くなってきた…。
この姉さん、こんなノリの人だったのか…。
「って冗談はさておいて。大佐、なぜあたしを殺そうとしたの?返答しだいじゃ許さないわ。」
どうやらこの言葉はマジらしい。なんせ迫力が違う。
「…貴様、我々にだまって、そこの小娘を連れて行こうとしただろう。」
「あら、バレてたのね。悪いけど、ひよこさんは友達なの。あなたたちの自由にはさせないわ。」
そう言うやいなや投げナイフを数本投げたらしく数人がうめき声をあげて倒れる。
それと同時に別方向からも斬り込んで来る人影が2つ。
「コーキさん、ひよこさん、ご無事ですか?」
「コーキなにやってんの?とっとすませて帰るわよ!」
斬り込んできたのはセシリーさんとジェニーローズだった。
そして銃声が響き、敵がまた一人倒れる。これはSakurakoさんか…。
どうやら俺についてるのは女難じゃなくて女神様たちだったようだな。
そして反撃が始まった。
つづく
第16話 燃える船
今、俺たちの目の前でキャラベルが1艘燃えていた…。
中に縛られたマリアルメルを残しながら……。
そして、俺とひよこさんは下品な男どもに捕まって縛られている。
俺の横でひよこさんは…
「…メルルン…メルルン…」
彼女の名をつぶやきながら、ただ泣いていた。
俺は何もできない自分に苛立ち、ただ血が流れ出るほど唇を噛み締める事しかできなかった。
どんどん炎は勢いを増し、いろいろなものが崩れ落ちる影だけが映っている。
俺は冒険者だから、こんな事は言いたくないが…
…お前ら必ず皆殺しにしてやる…。
俺たちを捕まえて笑ってる連中に対し、俺は復讐の誓いを立てた。
確かに俺を嵌めた女だが、別に殺されなきゃならんような悪い奴には見えん。
そして美人がこの世からいなくなるのは世界の大きな損失だ。
それも金のためなんぞに失っていいわけがない。
絶対に生き延びて仇をとってやる。
その後俺とひよこさんは重キャラックに連れられ船倉に放り込まれた。
未だにひよこさんは泣きっぱなしだ。
何度もマリアルメルの名をつぶやくが俺は慰めの言葉一つ浮かばなかった。
「お前ら、大人しくしてろよ。今、ボスを連れてくるからな。」
男達はそう言って船倉から出て行く。
そして、ひよこさんが絶望に染まった声で俺に話しかける。
「…ねぇ、コーキ。あたしたち、これからどうなるの?あたしたちも殺されるの?」
いつもの勝気なうるさい女はここにはいない。変わりに、はかなく弱弱しい娘がいた。
「…安心しろ。ひよこさんだけは殺させはしないさ。」
いつものひよこさんじゃない態度に俺も素直にひよこさんを守りたいと思った。
さて、奴らのボスがどんな人物かは知らんが、女を平気で殺せるような人物だ。
おそらく地図を奪ったら俺たちも殺しかねない。
もっとも価値があるのは地図だけだと知っていればの話だが。
さて、俺は脱出の準備を始めるとするか。
手は幸か不幸か後ろ手に縛られてはいたが、ベルトのあたりをまさぐる事はできた。
そして俺はベルトに隠してあったカミソリをとりだす。
宿で失敬してきたものだが、こんな時のために用意はしておくものだな、うん。
しかし、カミソリの刃なんてたいした事はないから、さすがに縄を切るには時間がかかる。
まあ、やつらに見えないようにこっそりとするしかないな。
そして縄を半分ほど切った頃に船倉のドアが開けられた。
横のひよこさんは最早ドアが開いても反応しないくらい憔悴し始めていた。
俺はドアの方向を見る。そこに俺の敵がいるからだ。
さっきの男達がまず船倉の中に入り、続いて軍服を着た男が入ってきた。
男は俺たちを一瞥するとゆっくりと口を開く。
「ふん。カリブで俺たちから逃げ切った船の船長にはとても見えんな。」
カリブ?ちょっとまて。カリブで俺たちを襲った奴らはサントドミンゴで全員倒したはずだが。
「我が名はアルベルト。ポルトガル海軍の大佐だ。」
げっ、そんな偉いさんが後ろにいたのかよ。ってことは、こいつらもチンピラじゃなく海軍兵ってわけか?
「サントドミンゴでの部下の仇を討たせてもらおうか?」
できれば丁重にお断りをしたいんだが…無理だろうな。
ならば、これだけ答えてもらおうか。
「おい、ひとつ教えてくれ。あんたの指示で女を一人、それも同国人のただの冒険家を殺したのか?」
俺は怒りを隠そうともせずアルベルトに問いかけた。しかし、奴の反応は意外なものだった。
「何の話だ?俺は貴様らを捕まえる命令を出しただけだが?」
そして部下達の方に向き直り、
「…お前ら、もしや関係ない民間人を殺害したのか?キャラベルに乗っていたのは裏切り者ではなかったのか?」
…裏切り者…?
「いえ、大佐。ご報告通り処分をしたのは裏切り者であります。」
「ならいい。この話はこれで終わりだ。」
どういうことだ?マリアルメルは俺をラッキーと間違えて罠に嵌めたんじゃないのか?
「そんな事より明日からお前たちの尋問を始める。覚悟しておけよ。」
それだけ告げると俺たちに背を向けて外へ出ようとしたその時、
「人殺し!!」
ふいに、ひよこさんがアルベルトに叫ぶ。
「メルルンを…メルルンを返せ!メルルンを…メルルンを…!」
目にいっぱいの涙をため、アルベルトを見据えながら何度も叫ぶ。
俺は見てて胸が締め付けられる思いだった。
だがアルベルトは顔色一つ変えることなく、
「人殺し…か。確かにそうだな。だが、お前達も人殺しだろう?俺はお前らに大事な人間を殺された。人殺しというならばお互い様だ。」
冷たくそれだけ言い放つと、振り返ることなく船倉から出て行った。
奴らが部屋から出て、しばらくしてからようやく縄を切り終えとりあえず身体は自由になった。
そして、ひよこさんの縄をほどくが、抜け殻になったように動こうとしない。
まあ、気持ちはわかる。でも、だからといって死ぬのを待つのも勘弁だ。
「…ひよこさん。マリアルメルの敵を討ちに行くぞ。」
俺の言葉に反応してようやくひよこさんが起き上がる。
それは今まで俺が見たこともないような怒りの表情をしながら。
さて、まずはこの船倉から脱出しないとな。
扉はしっかりと外から鍵がかかってやがる。
そして船倉の中も水樽の空しか見当たらない。
扉にそっと耳を当ててみろと扉の向こうにかすかに音がする。
そして人の気配も感じる。どうやら見張りがいるようだ。
なら、古臭い手ではあるがやってみるか。
「誰かぁあ!誰か来てくれぇぇ!腹がぁぁぁ、腹がぁぁぁ!!」
大声で叫ぶ。そして、扉のところに隠れて開くのを待ったが…あかねぇ。
やはりダメか…。さて、どうするか。
つづく
中に縛られたマリアルメルを残しながら……。
そして、俺とひよこさんは下品な男どもに捕まって縛られている。
俺の横でひよこさんは…
「…メルルン…メルルン…」
彼女の名をつぶやきながら、ただ泣いていた。
俺は何もできない自分に苛立ち、ただ血が流れ出るほど唇を噛み締める事しかできなかった。
どんどん炎は勢いを増し、いろいろなものが崩れ落ちる影だけが映っている。
俺は冒険者だから、こんな事は言いたくないが…
…お前ら必ず皆殺しにしてやる…。
俺たちを捕まえて笑ってる連中に対し、俺は復讐の誓いを立てた。
確かに俺を嵌めた女だが、別に殺されなきゃならんような悪い奴には見えん。
そして美人がこの世からいなくなるのは世界の大きな損失だ。
それも金のためなんぞに失っていいわけがない。
絶対に生き延びて仇をとってやる。
その後俺とひよこさんは重キャラックに連れられ船倉に放り込まれた。
未だにひよこさんは泣きっぱなしだ。
何度もマリアルメルの名をつぶやくが俺は慰めの言葉一つ浮かばなかった。
「お前ら、大人しくしてろよ。今、ボスを連れてくるからな。」
男達はそう言って船倉から出て行く。
そして、ひよこさんが絶望に染まった声で俺に話しかける。
「…ねぇ、コーキ。あたしたち、これからどうなるの?あたしたちも殺されるの?」
いつもの勝気なうるさい女はここにはいない。変わりに、はかなく弱弱しい娘がいた。
「…安心しろ。ひよこさんだけは殺させはしないさ。」
いつものひよこさんじゃない態度に俺も素直にひよこさんを守りたいと思った。
さて、奴らのボスがどんな人物かは知らんが、女を平気で殺せるような人物だ。
おそらく地図を奪ったら俺たちも殺しかねない。
もっとも価値があるのは地図だけだと知っていればの話だが。
さて、俺は脱出の準備を始めるとするか。
手は幸か不幸か後ろ手に縛られてはいたが、ベルトのあたりをまさぐる事はできた。
そして俺はベルトに隠してあったカミソリをとりだす。
宿で失敬してきたものだが、こんな時のために用意はしておくものだな、うん。
しかし、カミソリの刃なんてたいした事はないから、さすがに縄を切るには時間がかかる。
まあ、やつらに見えないようにこっそりとするしかないな。
そして縄を半分ほど切った頃に船倉のドアが開けられた。
横のひよこさんは最早ドアが開いても反応しないくらい憔悴し始めていた。
俺はドアの方向を見る。そこに俺の敵がいるからだ。
さっきの男達がまず船倉の中に入り、続いて軍服を着た男が入ってきた。
男は俺たちを一瞥するとゆっくりと口を開く。
「ふん。カリブで俺たちから逃げ切った船の船長にはとても見えんな。」
カリブ?ちょっとまて。カリブで俺たちを襲った奴らはサントドミンゴで全員倒したはずだが。
「我が名はアルベルト。ポルトガル海軍の大佐だ。」
げっ、そんな偉いさんが後ろにいたのかよ。ってことは、こいつらもチンピラじゃなく海軍兵ってわけか?
「サントドミンゴでの部下の仇を討たせてもらおうか?」
できれば丁重にお断りをしたいんだが…無理だろうな。
ならば、これだけ答えてもらおうか。
「おい、ひとつ教えてくれ。あんたの指示で女を一人、それも同国人のただの冒険家を殺したのか?」
俺は怒りを隠そうともせずアルベルトに問いかけた。しかし、奴の反応は意外なものだった。
「何の話だ?俺は貴様らを捕まえる命令を出しただけだが?」
そして部下達の方に向き直り、
「…お前ら、もしや関係ない民間人を殺害したのか?キャラベルに乗っていたのは裏切り者ではなかったのか?」
…裏切り者…?
「いえ、大佐。ご報告通り処分をしたのは裏切り者であります。」
「ならいい。この話はこれで終わりだ。」
どういうことだ?マリアルメルは俺をラッキーと間違えて罠に嵌めたんじゃないのか?
「そんな事より明日からお前たちの尋問を始める。覚悟しておけよ。」
それだけ告げると俺たちに背を向けて外へ出ようとしたその時、
「人殺し!!」
ふいに、ひよこさんがアルベルトに叫ぶ。
「メルルンを…メルルンを返せ!メルルンを…メルルンを…!」
目にいっぱいの涙をため、アルベルトを見据えながら何度も叫ぶ。
俺は見てて胸が締め付けられる思いだった。
だがアルベルトは顔色一つ変えることなく、
「人殺し…か。確かにそうだな。だが、お前達も人殺しだろう?俺はお前らに大事な人間を殺された。人殺しというならばお互い様だ。」
冷たくそれだけ言い放つと、振り返ることなく船倉から出て行った。
奴らが部屋から出て、しばらくしてからようやく縄を切り終えとりあえず身体は自由になった。
そして、ひよこさんの縄をほどくが、抜け殻になったように動こうとしない。
まあ、気持ちはわかる。でも、だからといって死ぬのを待つのも勘弁だ。
「…ひよこさん。マリアルメルの敵を討ちに行くぞ。」
俺の言葉に反応してようやくひよこさんが起き上がる。
それは今まで俺が見たこともないような怒りの表情をしながら。
さて、まずはこの船倉から脱出しないとな。
扉はしっかりと外から鍵がかかってやがる。
そして船倉の中も水樽の空しか見当たらない。
扉にそっと耳を当ててみろと扉の向こうにかすかに音がする。
そして人の気配も感じる。どうやら見張りがいるようだ。
なら、古臭い手ではあるがやってみるか。
「誰かぁあ!誰か来てくれぇぇ!腹がぁぁぁ、腹がぁぁぁ!!」
大声で叫ぶ。そして、扉のところに隠れて開くのを待ったが…あかねぇ。
やはりダメか…。さて、どうするか。
つづく




